「成年後見制度」は、非常に使いづらい。
「学びGARDEN」プレオープニング企画として、Zoom座談会を開催しました。その際、キミコさん(仮称)から「成年後見制度」の実体験をお聞きしました。
「成年後見制度」は聞いたことがあるものの、実際に使われている方のお話を聞く機会はなかなかありません。キミコさんのお話は大変貴重でした。ご本人の了解を頂きましたので、シェアさせていただきます。
成年後見制度の体験談 キミコさんの場合
10年ぐらい前に、キミコさんのお母さんが「物を盗られた」と時々訴えるようになったそうです。どうも軽い認知症を発症したようでした。
困ったのが、キミコさんのお母さんは今まで、自分の妹(キミコさんにとっての叔母さん)が賃貸住宅に住む際の保証人になっていました。
「今後は保証人にならないように」とキミコさんはお母さんに伝えていましたが、もしキミコさんが居ない時に保証人を頼まれたら、お母さんがまた受けてしまうかもしれないという点が心配だったそうです。
そこで、もし知らない間にお母さんが保証人になっても、その効力が発揮できないように、「成年後見制度」を利用することにしました。
ところが、実はこの「成年後見制度」が非常に使いづらい、ということを、使い始めてからわかったのです・・・。
「成年後見制度」には「法定後見制度」と「任意後見制度」と2つあります。(制度についての詳細は別コラムで紹介したいと思います)。
キミコさんは「法定後見制度」を利用しました。
キミコさんのお母さんは、判断能力が著しく低い「被後見人」ではなく、少し判断能力が残っている「被保佐人」と認定されました。そしてキミコさんは、被保佐人のお母さんをサポートする「保佐人」となりました。
※なお、後見と保佐は判断能力の違いで、制度的な利用方法はほぼ同じです。そのため、このコラムでは、一般的に知られている「後見」に統一させて頂きます。
つまり、キミコさんを後見人、キミコさんのお母さんを被後見人と表記します。
「法定後見制度」のデメリットは?
1.財産管理の報告が非常に手間がかかる!
年に2回、被後見人であるお母さんの財産を、後見人のキミコさんが裁判所に報告しなければいけなくなりました。
報告するには、お母さん名義のすべての通帳のコピー、証券口座のコピー、各口座の半年間の残高の増減を表計算ソフトに入力・印刷したものなどを作って、提出する必要がありました。たとえ利子が1円でもついていれば、増減を入力しなければいけないのです。
また、通帳の記帳作業は平日しかできないことも多く、仕事や子育てをしながら、報告期日までに作成することも難しいとキミコさんは感じました。
2.後見人を監督する人への費用が毎年かかる!
キミコさんがお母さんの法定後見人になった頃は、家族がなることができました。
しかし、家族による横領などの不正が多発した事などから、最近は家族が法定後見人になろうとしても、裁判所から却下されることが多くなってきたようです。
キミコさんの場合も、特に問題は起こっていなかったのに、後見人を監督する立場の「後見監督人」を数年前からつけられてしまいました・・・・。「後見監督人」は司法書士などプロで、裁判所が選任することが多いです。
その「後見監督人」に対する費用の相場が1~2万円/月。つまり1年間で12万円から24万円近く費用がかかるのです。
後見監督人は、キミコさんが作成した報告書をチェックしたり、キミコさんのお母さんと面談するだけ。特に何かを積極的にしてくれるわけではないそうです。それなのに、毎月の費用だけがかかるのでした・・・。
3.最大のデメリットは、後見制度は途中でやめることができない!
1度申請して始めてしまうと、後見人本人が亡くなるまでずっと続き、途中で止めることができないのです。
つまり、1の財産管理の報告も、2の後見監督人への費用も延々と続くのです。
そして、お母さんのために、お母さんの預貯金を使おうと思っても、事前に「後見監督人」に相談しなければいけません。相談しても、却下される事もあるそうです。
キミコさんが「成年後見制度」を申請したきっかけは、お母さんのためでした。それなのに、この制度を使い始めると、後見人になった人に膨大な手間がかかり、後見監督人への支払い費用もかかるばかりで、あまりメリットが感じられない、というのがキミコさんの感想でした・・・・。
せっかく作られた「成年後見制度」なのに、これだけ利用しづらいのであれば非常に勿体ないと、キミコさんのお話をお聞きして思いました。
そして、「使いづらい」という事があまり知られていない事も大きな問題です。
家族や自分たちのために、この制度を使ったほうがいいのかどうか、よく吟味しなければいけないと感じました。
キミコさん、体験談をシェアしてくださり、誠にありがとうございます(^o^)
なお、現在は「家族信託」という制度を使い始める人も出てきました。この制度もメリットとデメリットあるので、注意が必要です。
後日、「家族信託」を知るためのセミナーを開催したいと考えています。